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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
「冐險世界 第四卷第拾貳號」博文館、1911(明治44)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 页
(五)懦弱千万
芝原広く、梅樹雅趣を帯びて、春はさこそと思われる。時刻は既に遅かったので、有名な好文亭は外から一見したばかり。この好文亭は水戸烈公が一夜忽然として薨去された処で、その薨去が余り急激であったため、一時は井伊掃部頭の刺客の業だと噂されたという事だ。
(五)懦弱千万
大洗までの無駄足は止しにして、水戸から発足と決定した。というのは、翌日は行程十五里、山間の大子駅まで辿り着いておかねば、その次の日、予定のごとく八溝山の絶頂へ達する事は極めて困難であるからだ。その夜は座相撲や腕押しで夜遅くまで大いに騒いだ。ところで、水戸から膝栗毛に鞭打って、我が一行に馳せ加わった三勇士がある。水戸の有志家杉田恭介君、川又英君、及び水戸中学出身の津川五郎君で、孰れも健脚御自慢、旅行は三度の飯より好きだという愉快な連中だ。ところで困ったのは吾輩である。吾輩は元来ここまで一行を見送り、明日は失敬して帰京する予定なので、旅装も何もして来なかったが、新手の武者さえ馳せ加わっては、見苦しく尻に帆掛けて逃出す訳にも行かない。且は吾輩の膝栗毛も頻りに跳ね出したい様子なので、ままよ後の要務は徹夜しても片付けろと、八溝山をこえて那須野ヶ原まで、一行の尻馬に跟いてお伴をする事に相成った。