轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页
霜柱
ということであったが、しかし結局は加増も承知し、二人は家老に就任した。
そして十月になった。
霜柱
よく晴れた朝の九時、――浄妙院の裏門から出て来たおみやは冬空に高く棟を張った、浅草寺の本壁の屋根や、五重塔を眺めるようすで、すばやく道の左右に眼をはしらせながら、伝法院の脇を歌仙茶屋のほうへぬけていった。
黒っぽい小紋の小袖に、納戸色の被布をかさね、やはり納戸色の縮緬の頭巾をしている。小さな包みを抱えた手に、水晶の数珠をかけ、袖に入れた右手で、その包みを押えた姿は、このまえと同じように、寺まいりに来た若い後家というふうにみえた。
「お福茶をあがってらっしゃいまし、お福茶をめしあがれ」
並んでいる茶店では、もうしきりに客を呼ぶ声がしていたし、参詣する人たちもかなり出ていた。
おみやは端から五軒めの茶店へ、「おばさん、お早う」と云いながらはいっていった。腰掛けの並んだ店の奥に、「お吉」と染めた色のれんが掛けてあり、そこから五十歳ばかりになる肥えた女が、こちらを覗いた。
「おや、お帰んなさい、今朝は早いのね」
「法事があるんですって」
「そう、まあこっちへおいでなさいな、まだ誰も来ていないのよ」