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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页

青空文庫

と兵部は云った、「それは、斬られた奸臣四名の遺族のことだ、坂本には係累なし、九郎左衛門にはそばめが一人で、これも放逐すれば済むであろう、だが、畑与右衛門には子が二人おり、宮本又市には妻と弟があるという、評定職でもこれらの処置は考えておるであろうが、もしあったらいまきいておきたいと思う」

「しかし、それは」と勘解由が云った、「四人の者が奸臣であったという、たしかな証拠が認められてからのことではないでしょうか」

「たしかな証拠だと」

「そうです、一般の評や漠然とした伝聞などでなく、現実にこれということのできる証拠です」

「そのほうはいまになって」と兵部が高い声をあげた。すると初めて、甲斐が静かに口を切った。

「遠山どの、まず、――」と彼は勘解由を抑えた。それから兵部のほうを見て云った。

「これはまだ評議にはかけておりませんが、畑の伜は六歳の幼年、娘は十三歳とか申しましたが、私の一存で伜は出家させることにし、姉をつけて、とりあえず良源院へ遣わしました」

「なるほど、姉をつけてか」

「いちじに父母をうしなって哀れでもあり、まだ六歳では寺かたでも迷惑でございましょう、八歳になるまでと思って、いっしょに遣わしました」