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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页

青空文庫

断章(二)

明らかに、雅楽頭に通謀する者がいる、という口ぶりであった。

だがそれは済んだことだ。綱宗の逼塞はもはやどうしようもない。しかし、六十万石を分割するという陰謀は重大である。元和五年に福島正則が除封されてから、蒲生氏、加藤氏、田中氏はじめ、除封削封された諸侯は十指に余っている。もちろん幕府の基礎と権威をかためるためだから、口実さえあれば伊達家だとて遠慮はしないだろう。

甲斐は溜息をついた。

「なにか仰しゃいましたか」と駕籠の前から、政右衛門が云った。

「いや、なんでもない」と甲斐は云った、「少しいそいでやってくれ」

断章(二)

――ただいま到着しました。

「待っていた」

――仙台でひまをとりました、御城下はすっかり秋でございましたが、こちらの残暑のひどいのには驚きました。

「使いはまにあったか」

――まにあいました。

「ようすを聞こう」

――お使者をいただきましたので、一ノ関からすぐ仙台へとばしました。里見十左衛門はすでに江戸から到着しておりましたが、奥山どのが吉岡の館へまいられたので、戻って来るまで会議が延びていたところでした。

「大学が館へいっていたと」

――そのように、うかがいました。