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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

」

「うむ。」

と、新賀は案外おとなしくうなずいて、自分のもとの席にもどったが、いかにもぐったりしたように、そのまま眼をつぶり、両手で額をささえた。それはいつもにない彼の姿勢だった。

次郎は、そのあと、また馬田の方に向きなおって何か言い出しそうなふうだったが、しばらく考えたあと、思いかえしたように廊下に背を向け、馬田に対したのとはまるでちがった、しみじみとした調子で言った。

「僕は諸君にあやまらなければならないことがある。僕は、やっと、今それに気がついたんだ。」

いくらかざわつきかけていた空気が、それで、またしずかになった。

「僕たちは、いま、ストライキをやるかやらんかという問題で争っている。しかし、考えてみると、これほど無意味な争いはない。この無意味な争いの原因は――」

言いかけると、廊下の方から誰かがまた叫んだ。

「無意味とは何だ。」

次郎はすこし顔をねじ向けて、

「朝倉先生の留任とストライキとは全く無関係だという意味だ。」

「もっとはっきり言え。ストライキをやっても駄目だというのか。」

「むろんそうだ。」

「やってみないで、どうしてそれがわかるんだ。」

「朝倉先生の人格がわかれば、それもわかる。