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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
それから、
「やあ、道江さんも来ていたんだね。」
と、にこにこ笑いながら、みんなと円陣をつくった。
が、それっきり、持っていた団扇でゆるゆると頸のあたりをあおぐだけで、いつまでも口をきこうとしない。
「僕、次郎君のさっきの話、いま階下で小父さんにも話したんだ。」
大沢がとうとう先に口をきった。それでも俊亮はしばらく口をきかなかったが、急に団扇の手をやすめて次郎に言った。
「で、次郎、お前どう考えているんだい。」
「どうせ。学校にはもう行けないと思っているんです。」
次郎は眼をふせて答えた。
「そりゃあ、もうわかっている。父さんは、お前が配属将校に呼ばれたときいた時に、きっとそんなことになるだろうと覚悟をきめていたんだ。朝倉先生が別れぎわに言われた言葉だけでは、まだいくぶん未練を残していたがね。」
みんなは顔を見合わせた。俊亮の言葉は、彼らにとって、全く意外だったのである。次郎自身は、なぐりとばされたようでもあり、ひょうしぬけがしたようでもあり、急に気が軽くなったような気持でもあった。
「だが――」
と、俊亮はちょっと考えて、
「どんな態度で学校を退くか、その退きかたが問題だよ。