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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
――馬田の考えは頗る念入りだった。彼がそれほどまでに次郎に反感を持つようになった最も大きい原因が、道江にあったことはいうまでもない。
馬田のあざけるような笑いを肯定するように、すぐ誰かが言った。
「そういえば、昨日本田は、変に人の顔ばかりのぞきながら血判をしていたが、ひょっとすると血判をごまかしたんじゃないかね。」
「血判はごまかそうたってごまかせないよ。みんなで見ているんだから。しかし、本田がそれをいやがっていたことはたしかだね。」
「それには何か特別な原因があったんじゃないかね。いつもの本田にしちゃあ、すこし可笑しかったよ。」
「馬田にはそれがわかっているんじゃないのか。」
馬田は、また「ふふん」と笑った。そして、
「君らはすこし本田を買いかぶっていやしないかね。」
「そうかなあ。しかし、僕たちが入学した時のことを考えてみたまえ。五年生の鉄拳制裁にびくともしないで反抗したのは、本田だけだったぜ。」
みんなの頭には五年まえの雨天体操場における恐ろしい光景がまざまざとよみがえって来た。その時の次郎の英雄的な態度は、忘れようとしても忘れられない記憶である。また、これはみんなが実際に見たわけではなかったが、「三つボタン」