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ししゃのしょ

死者の書

折口 信夫

「日本評論 第十四巻第一号~三号」1939(昭和14)年1月~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,340 字 · 126 页

青空文庫

其とおなじ様な気持ちから、どの氏でも、大なり小なり、そうした石城づくりの屋敷を構えるようになって行った。

蘇我臣一流れで最栄えた島の大臣家の亡びた時分から、石城の構えは禁められ出した。

この国のはじまり、天から授けられたと言う、宮廷に伝わる神の御詞に背く者は、今もなかった。が、書いた物の力は、其が、どのように由緒のあるものでも、其ほどの威力を感じるに到らぬ時代が、まだ続いて居た。

其飛鳥の都も、高天原広野姫尊様の思召しで、其から一里北の藤井个原に遷され、藤原の都と名を替えて、新しい唐様の端正しさを尽した宮殿が、建ち並ぶ様になった。近い飛鳥から、新渡来の高麗馬に跨って、馬上で通う風流士もあるにはあったが、多くはやはり、鷺栖の阪の北、香具山の麓から西へ、新しく地割りせられた京城の坊々に屋敷を構え、家造りをした。その次の御代になっても、藤原の都は、日に益し、宮殿が建て増されて行って、ここを永宮と遊ばす思召しが、伺われた。その安堵の心から、家々の外には、石城を廻すものが、又ぼつぼつ出て来た。そうして、そのはやり風俗が、見る見るうちに、また氏々の族長の家囲いを、あらかた石にしてしまった。