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ししゃのしょ

死者の書

折口 信夫

「日本評論 第十四巻第一号~三号」1939(昭和14)年1月~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,340 字 · 126 页

青空文庫

茎を折っては、繊維を引き出し、其片糸を幾筋も合せては、糸に縒る。

郎女は、女たちの凝っている手芸を、じっと見て居る日もあった。ほうほうと切れてしまう藕糸を、八合・十二合・二十合に縒って、根気よく、細い綱の様にする。其を績み麻の麻ごけに繋ぎためて行く。奈良の御館でも、蚕は飼って居た。実際、刀自たちは、夏は殊にせわしく、そのせいで、不機嫌になって居る日が多かった。

刀自たちは、初めは、そんな韓の技人のするような事は、と目もくれなかった。だが時が立つと、段々興味を惹かれる様子が見えて来た。

こりゃ、おもしろい。絹の糸と、績み麻との間を行く様な妙な糸の――。此で、切れさえしなければのう。

こうして績ぎ蓄めた藕糸は、皆一纏めにして、寺々に納めようと、言うのである。寺には、其々の技女が居て、其糸で、唐土様と言うよりも、天竺風な織物に織りあげる、と言う評判であった。女たちは、唯功徳の為に糸を績いでいる。其でも、其が幾かせ、幾たまと言う風に貯って来ると、言い知れぬ愛著を覚えて居た。だが、其がほんとは、どんな織物になることやら、其処までは想像も出来なかった。

若人たちは茎を折っては、巧みに糸を引き切らぬように、長く長くと抽き出す。