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あぶらじごく
油地獄
斎藤 緑雨
「国会新聞」1891(明治24)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,624 字 · 69 页
状紙を、かまわないのだろうと自問自答で推ひろげ、貞之進の顔を見い/\、一筆しめしと迄書いて、※が儂には書けないのこうですかと、それから紙一面の落書、やがて目賀田と曲ったなりに角字で書いて、巧いでしょうと笑いながらちょっと筆を置いた時酸漿の鳴る音のしたのが、追々詞のぞんざいになる始めであったが、それが貞之進には隔てのなくなったこととのみ思われて、その筆を取上げて得意の小歌という走り書が見せたかった。
これがあなたですよ、これがあなたの奥さんですよと云って、小歌が画といえば画、丸に目鼻を書いて居る折婢が来て、感心だね歌ちゃんは絵心があるよと笑って見て居たが、小歌はそれにも飽たか半分で止めて、今度は鼻紙を細く引裂いて綯を拵え、見ちゃアいけませんよと、向むいてその端へ何やら書附け、御神籤のように振って居たが、あなたこれを結んで頂戴なその墨のついたのをよ、いゝえこっちのですと差出したを、貞之進は云われる通り結ぶと、小歌はその結ばれた綯の端を一々あけて、あはゝあはゝと笑って居るを、お見せと婢は覗いて、あなたと小歌さんです争われないのねえお奢んなさいと云って、やきもちが浜田さんだって、宜加減におしよと小歌の脊中を撲たのに意味があった