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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「なるほど」

「そうだと返事を出すと、折返し手紙が送られて来た。写真が同封してあった。これがそれだ」

栄介はその古封筒を逆さにした。一枚の小さな写真が出て来た。私はそれを受取った。

写真の色は褪せていた。真中に木の墓標が立っている。

〈故陸軍衛生曹長矢木城介之霊〉

と、辛うじて読めた。墓標の周囲には短い草がところどころ生え、背景は茫々として何もない。地平と空との境もさだかでない。花も咲かず、鳥も飛ばない荒涼たる風景の中に、その墓標はぽつねんと立っていた。

「ここはどこだね?」

「厚和という街の城外だ。昔は綏遠と言ったらしいんだがね。蒙古地区だよ」

「殺風景なところだねえ」

私は写真を返しながら言った。

「もっとも城介君は、花や自然にほとんど興味を持っていなかった。その点では、淋しくなかろう」

いつだったか、私がまだ学生の頃、城介がやって来た。包みからごそごそと花を取出した。ほんものの花でなく、造花である。

「どうしたんだね」

と私が聞くと、

「うん。兄貴の部屋、あんまり飾りっけがないんでね、うちからそっと持ち出して来てやったのに、留守なんだ。あとで兄貴に渡して呉れないか」