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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
そうしてそれを警護して行く武士は、紀州藩の武士なのであった。
それにしてもどうして紀州藩では、五十嵐右内を国元へ送るに、罪人として網打ち駕籠へ乗せ、公然と送って行かないのであろうか?
いやそれは出来なかった。
罪人として扱う以上、罪状を白洲で調べなければならず、調べたが最後紀州頼宣卿が、明暦義党の企てに一時なりとも加盟したことが、表面へあらわれて来るからであった。
さりとて普通の士人として、普通の駕籠で送ったなら、途中で逃亡されようもしれず、あるいは同志の連中が、同じく途中で奪うかもしれない。
そこでこのような変則な駕籠で、街道を送って行くのであり、もしもの事件に備えるため、藩中にあっても武術名誉の、十五人の武士が、警護の任に、このようにあたっているのであった。
が、この警護方も妙なものであった。
というのは道中目立たぬよう、注意をしなければならなかったので、十五人が駕籠脇に付き添おうとはせず、ただ数人が左右に附き、その他の者は前と後とに、かなりへだたった間隔を置いて、それとなく従いて行くのであった。
ところが同じ東海道を、さらに二組の特殊の旅人が、京の方へ向かって旅をしていた。