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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
で、もし自分がこのまま死んだら、生き残っている党の者のうち、誰一人としてその隠し場所を、知っている者はなくなるであろう。
これが心外にたえないのであった。
(誰でもよいから同志の一人が、忍んで逢いに来てくれればよいが)
彼はひたすらにそう思った。
(智謀にも勇気にも秀でている、鵜の丸兵庫殿であるから、この俺を救い出そうとして、いろいろ苦心していることではあろうが、名に負う相手は大藩の紀州、それに今日までの厳重の警戒、助けることが出来ないのであろう)
万感がこもごも湧くのであった。
(入谷田圃で短い時間ながら、兵庫殿に逢った時に、軍用金の隠し場所を、一口明かせばよかったのだが、捕えられようとは思わなかったので、ついその機会を失ってしまった)
万感がこもごも湧くのであった。
「五十嵐氏お寝みなさりませ」
と、この時間の襖をあけて、警護の武士の一人が云った。
「はい」
と右内は一揖した。
間もなく右内は床へはいった。
警護の武士たちも眠ったらしく、鼾の声などが聞こえて来た。
次第に夜が更けて行き、室内一統眠ったとみえ、四辺闃寂として音もなくなった。
と、突然宿の門口の辺で、大爆発の音が聞こえた。