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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「駈け落ち者と見えないかしら?」
ヌケヌケと梶子が云い出したのである。
「そうあってくれればよろしいのでござるが」
と、何んと三十郎もヌケヌケと、こんなことを云い出した。
驚いたのは二人の武士で、
「カ、駈け落ち者、ミ、見えませぬな」
「オ、男の方が、ミ、みっともなさ過ぎる」
「ホ、ホ、ホ」
と横腹を抑え、梶子は声を立てて笑い出した。
「三十郎さん、テレたわねえ」
「ひどいテレ様で」
と三十郎も苦笑し、
「汗をかきましたよ、脇の下あたりに……」
「ご主従かな、ちと変だが」
と、軍右衛門がまた訊いた。
「主従? ……さよう、用心棒で!」
と、三十郎がズバリと云った。
「附け人と申してもよろしゅうござる」
二人の武士は眼を見合わせた。
「附け人? 用心棒? ……変なお言葉で……」
と霜降小平が渋面をし、
「それではまるで博徒のようで」
と小林軍右衛門も顔をしかめて云った。
「もっとよくない身分なんですよ」
と、不意に梶子が様子を変え、横柄に、叱るように、揶揄するように云った。
「あたしゃア女細作なのさ」
「女隠密と申してもよいので」
三十郎も揶揄するように云った。
「女細作? 女隠密?」