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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

、大坂の方へ潜行した。

その間に三十郎の口によって、菊女の聞いたことといえば、人形の男雛の胸の中に、黄金島の地図があり、その島の一所に魚屋の遺産が、隠匿されてあるということと、地図を手頼りにしてその島へ行って、その財宝を探すつもりだ。――といったようなことであった。

「あなたをも一緒にお連れするつもりじゃ。……実は最初は梶子という女と、一緒に行く筈になっておりましたが」

などと三十郎は云ったりした。

菊女は民弥からそれ以前に、二個の人形のうち女雛の方の胸に、萩丸自筆の宥免状が、かくされてあるということは、ハッキリ告げられて知っていたが、男雛の胸の中に黄金島の秘密が、地図と一緒にあるということなど、全然告げられていなかったので、不思議に思わざるを得なかった。

(まだ三十郎は女雛の胸の中に、わたしたちの欲しがっている宥免状の、かくされてあるということに、一向気がついていないらしい。隙をうかがって奪い取り、一人ででも紀州へ出かけて行き、頼宣卿へつてを求めて差し上げ、同志の宥免を乞いたいものだ)

こう、しきりに熱望された。

で、それからというものは、貞操を許さない範囲において、菊女は三十郎と馴れなじみ、心を油断させるようにした。