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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

(そうだそれに!)

と彼女は思った。

(同志の間に萩丸様が、まだ捕えられているようなら、同志や萩丸様に邂逅して、もう一度萩丸様を騙しすかして、宥免状を書かせたらいい)

(まあ何んだってわたしたちみんなは、そのことに早く気が付かなかったのだろう。……どうして一枚のあの宥免状ばかりに、今日までこだわっていたのだろう?)

このことを思うとおかしくさえなった。

(逃げよう)

と菊女は決心した。

洞の口へ行ってみた。

二、三人の者が附近にいたが、人声がかしましく聞こえて来るところの、林の奥の方へ注意を向け、こっちへは背中を向けていた。

(有難い)

と菊女は感謝しいしい、素早く洞の口から出て、洞に添って岩山の背後へ、栗鼠のように小走った。

幸い誰にも気づかれなかった。

林の中へ飛び込んだ。

(もう大丈夫! もう大丈夫だ!)

彼女は一散に林の中を走った。

もちろんこれというアテはなかった。

(ともかくも海岸へ!)

――で下へ下へと走った。

三十郎は部下を率い、林の中をさがし廻っていた。

「侍というのはどんな奴だった?」

「若い野郎でござんしたよ」

部下の一人がそう答えた。

「女というのはどんな奴だった」