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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

さっきまで聞こえていた足音が――三十郎の足音が、今は聞こえなくなっていた。

(まあよかった)

と菊女は思った。

(さあこれからどうしよう?)

けっきょく三十郎に目付からないように、細心の注意をした上で、この洞窟から外へ出て、明暦義党の同志たちの所へ、行くというより策はなかった。

(この洞にはなお三筋ほどの、出入り口があるそうな。その一つから出たいものだ)

で彼女は先へ進んだ。

十字路!

丁字路!

三叉路!

道は枝から枝が出て、どっちへ行ったら、どこへ出られるか、また、奥の方へ進んでいるのか、同じ一画をドウドウ巡りしているのか、それとも出入り口へ進んでいるのか、すこしも見当がつかなかった。

四辺は暗黒でかつ寒かった。

だんだん菊女は心配になり、次第に恐怖を催して来た。

三十郎も同じであった。

菊女の後を夢中で追っかけ、どこをどう走って来たものか、全く見当がつかなくなっていた。

で闇の中に佇んで、心をしずめて考え込んだ。

菊女を手に入れて思いをとげよう。――などといったような考えは、今の彼にはなくなっていた。

(ともかくも洞窟から外へ出たい。それから改めて部下たちと一緒に、松明などを充分に用意し、探険隊としての準備をととのえ、財宝さがしに着手したい)