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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「この辺には暗礁多く、それに乗り上げたら一大事! で、われわれの小船について、その船お進めなさりませ!」
途切れ途切れにそういうのが聞こえた。
「思った通り海賊ではなく、親切な島の漁師どもであったぞ」
と、老貴公子は愉快そうに云い、
「その者二、三人この船へ参って、針路の案内いたしくれるよう、そち達ねんごろに頼んで見よ」
と云った。
そこで家来たちは口々に叫んだ。
「とてものことにそなた方二、三人、この船へおこしくだされて、航海のお差図くだされい!」
「お願いいたす! 船へおいでくだされい!」
すると小船から声が来た。
「心得てござる、縄お投げくだされ!」
縄が数条投げられた。
その縄に取りつき三人ほどの者が、ほとんど決死の冒険をもって、大船へまでよじ上って来た。
老貴公子は進み出て、ねぎらうように声をかけた。
「勇士! まことに真の勇士! ことには親切、それに仁侠! われら心よりお礼申す」
その老貴公子の堂々たる風姿を、篝火の光で認めたは、真っ先に上って来た佐原嘉門であったが、
「あッ」
と驚きの声をあげた。
「意外も意外、あなた様には!」
こういう様々の出来ごとが、洞窟外では行われたが、洞窟――お蔵の中においても、いろいろの事件が行われた。