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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

二人の足もとから無数の骸骨が、広い部屋を埋めているではないか。

岩壁に背中をもたせかけているもの、床の上に仰臥しているもの、床の上にひざまずいているもの、天を仰ぐような様子のもの、悲泣しているような形のもの、二人三人からみ合っているもの、それとは反対にお互い同士、格闘をしているものなど、無数に散在しているではないか。

髑髏だけとなって転がっているもの、手足だけとなって散在しているものは、数え切れないほどであった。

腐蝕した鋤や鍬などが、これも無数に散在していた。

そうしてそれらの骸骨や、鍬や、鋤の群の中に、巨大な石造の櫃が五個、規則正しく置いてあった。

二人はそれへ突進して行った。

しかし石棺は鉄の蓋をもって、厳重に蔽われ鎧われていた。

しかし、こういう光景の中に、このような石棺があるのである。

この中に魚屋の財宝が、充満しているということは、常識をもって考えられた。

梶子と民弥とは満足に充ちた心――喜びと幸福と感謝とで、無言でしばらく石棺を見詰めた。

それから揃ってそれへ腰かけ、互いに体をもたせ合い、疲労した体を休ませた。

「ねえ」

と梶子は梶子らしくない、初心の女さながらの声で、骸骨の群を指さしながら云った。