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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「抜け穴? なるほど、そうでしたか! ……ではここから脱けられるのですね! 外へ! おおおお外へ外へ!」
「そうですそうです脱けられるのです!」
「では私がはいってみましょう、石棺の中へはいってみましょう」
民弥は手さぐり足さぐりで、石棺の中へ身を沈めた。
「梶子様梶子様ありました! 階段が階段が!」
「おおありましたか、もう大丈夫!」
「さあさああなたも私につづいて……」
「はいはい行きますとも行きますとも!」
梶子も石棺の中へはいって行った。
垂直についている階段は、おおよそ二丈あまりつづいていたが、それが絶えると地面になった。
二人は嬉しさに声高く笑い、手をつないでその道を走った。
と、行手から轟々という、物凄い音が聞こえて来た。
「何んでござろう?」
「何んでしょう?」
いぶかしくも気味悪くも思ったが、しかしそういう物音は、戸外から来るものと思われたので、二人にはかえって頼もしい気がした。
とうとう抜け道の出口まで来た。
口は小さくて這い出さないことには、ほとんど出ることが出来なかった。
でもとうとう這い出した。
海が、荒れている魔物のような海が、すぐ眼前にひろがっていた。