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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
轟々と音立てて拡がっていた。
二人が脱けて来たこの道こそ、洞窟に通じている四筋の道の中、誰にも発見されていないと、そう云われている一筋の道。――全くその道に他ならなかったのである。
いまだに風雨は荒れていた。
二人の体は雨に打たれ、打ちよせて砕ける波の飛沫にぬれ、文字通り濡れ鼠のようになってしまった。
それでも二人は嬉しくてならず、またここで大声に笑った。
「さあこれからどうしましょう?」
「このシケではおそらく私達の船は、砕かれてしまったことでしょう。……人里へ出るより仕方ありません」
そこで二人は岩山の裾を、一方へドンドン巡って走った。
と、行手に火の光が見え、大勢の人声がきこえて来た。
梶子の手腕
霜降小平に率いられた、それは紀州藩士たちであった。
明暦義党の幾人かが、この洞内にいるそうだ、いずれ出て来るに相違ない、そこを狙って討って取ろうと、同僚加藤源兵衛達は、一方の出口に見張っている筈、ここには霜降小平たちが、こうやって見張っているのであった。
焚火を焚き、それにあたたまり、彼らは雑談を交わせていた。
「や、女がやって来る」
一人の武士が驚いたように云った。