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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「でもそれには莫大な金が……」

「その金は是非とも梶子殿と、民弥に出して貰いたいものじゃ」

「ああ魚屋助右衛門の財宝」

「さよう二人で目付けた財宝を」

「喜んで呈上いたしますとも」

「足りないところは明暦義党の、軍用金をもって充たすがいい」

「でも幕府や紀州家で……」

「その方はわしが説き伏せるよ」

二十人の義党の面々が、すっかり駕籠にのせられてしまった。

「法音寺へ!」

と一人の武士が云った。

街道を通ってずっと行くと、少し横手に外れたところに、法音寺という法華寺がある。

その方へ一団は進んで云った。

姉小路卿も梶子も駕籠にのり、その後からついて行った。

街道筋で

非人小屋の中に菊女はいた。

猿轡をかまされ縛られたままで、干鮭のようにころがされていた。

その周囲にいる者といえば、代五郎と浅吉と孫九であった。

「こう、随分いい女だなあ」

「これを三十郎さんがしめるんだと思うと、うらやましいような変な気がする」

「その三十郎さん何をしているのかなあ」

三人はそんなことを云っていた。

非人小屋は他にも幾個かあって、十数人の非人たちがいたが、女を誘拐して来ることなどには、日頃から慣れっこになっているから、見に来ようともしなかった。