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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

するようになった。

翌年の春になった時、この島の住民全部によって、歓迎された二組の夫婦の、盛大な結婚式が行われた。

その一つは鵜の丸兵庫と、烈女菊女との結婚であり、もう一つは松浦民弥と、梶子との結婚のそれであった。

梶子はこの島へ渡った日から、女隠密というような、危険な仕事からは脱していた。

この年の秋の快よい日に、紀州から大船が船出して、××島へ渡って来た。

それには二人の老貴人と、青年貴公子とが乗っていて、多数の武士にかしずかれていた。

紀州頼宣卿と姉小路卿と、すっかり健康を恢復し、かつ艱難を経たために、かえって剛健怜悧になったところの、萩丸君との三人であった。

萩丸君にお目通りした時、菊女は嬉しさと懐しさとで、泣いて泣いて泣き止まなかった。

萩丸君も涙を流し、

「菊女よ、わしは生きている限り、お前を愛情こまやかな、よい姉として忘れないよ」

と、こうしみじみと仰せられた。

頼宣卿たちは島を巡り、その絶佳の風景と、その逞しい要害と、義党や郷民によってわずかな間に、島が開拓されたことに、讃嘆の語をもらされた。

そうしてそれらの人々へ云った。

「資金はわしからいくらでも出すから、お前たちはこの島の屯田の士として、開墾と防備にあたってくれ。