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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

美しき客

そうして兵庫の住居の方へ歩いた。

と、一人の覆面をした武士が、その後をひそかにつけ出した。

美しき客

姉小路卿は自分の居間で、一人で長閑そうに茶をのんでいた。

厄介だった柳営との交渉、それが首尾よくかたづいて明日から暢気な身の上になれる。湯治場へ行って骨休めが出来る。

このことがひどく嬉しいのであった。

(さて今夜もこれで休むか)

こんなことを思いながら、なお長閑に茶をのんでいた。

と、小侍がはいって来た。

「ご来客にござりまする」

「ナニ来客? こんな夜分に? ……で、どのようなお方かな?」

「ご婦人の方にござります」

「女? ほほう、それはそれは。……が、何というご婦人かな?」

「梶子様と申されましてござります」

「おお梶子! さようかさようか、存じております、ではお通しを」

小侍が立ち去ってしばらく経つと、その小侍に案内されて、梶子がしとやかにはいって来た。

高禄の武家の奥方のような、威も品もある装いであった。

坐ると恭しく一礼し、

「久々にてお目通り仕りまする。……当地へご下向と承わりまして、一度お目もじ仕りたく、参上いたしました次第にござります。……周防守様よりも常日頃から、ご贔屓お受けいたしおりますので……かたがた今夜、このような時刻に。