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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

ふろ屋、精米所、ガラス屋から、日立造船の前身である大阪鉄工所、稲畑染工所、尼崎汽船などの大ものにも取組んでいった。長谷川合名会社は間もなく、長谷川忠七商店と鳥居熊太郎商店に分かれ、私は鳥居商店の方へ移った。そのころ私は仲仕が話しているのをふと小耳にはさんだ。

『本庄の毛布会社で石炭が切れてるそうや……』

私は疾風のような勢いでその毛布会社にかけ込み、みごとに注文をとった。実はしけ続きで安治川筋には石炭がまるっきり入荷せず、私にも品物を手に入れる成算はなかったのだから内心は気が気ではない。しかし幸運にもしけをついて、石炭の第一船がはいってきたのだ。やっと石炭の引渡しができたときのうれしさ、全くほっと肩の荷をおろした。契約高は百斤三十二円で非常な利益になったから、同業者のなかでも『安治川の栄吉は切れる!』と一躍名をあげたものである。

抜けがけの功名もやった。それは大阪港の築港工事に使うしゅんせつ船「大浚丸」一号から十三号までの十三隻に使う石炭二千五百万斤の大入札のときである。石炭屋一同は申合わせて談合値を決め、あらかじめ落札者を置いて、あとで割前をもらう一種の不正入札の方法をとった。