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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
七十九にもなっていまさらのろけるわけではないが、こんな話もあった。
私が大阪に住むようになってからのある日、東京の柳橋のお利枝という女がやってきた。これは大した美人で、当時の上流の社交界の花形。度胸もあり、弁舌もさわやかな頭のいい女だった。これがダイヤの指輪などをキラキラさせながら、飛行機に乗って私に『金を貸してほしい』といってきたのである。普通のしろうと女が太刀打ちできる相手ではない。しかし私は多少ためす気もあって、わざとかくれ、妻に応対させたが、とてもだめだろうと内心では思っていた。ところが妻はみごとにお利枝をさばいて、一銭も渡さずに東京へ追い返してしまった。みごとな腕前である。これには私もかげで大いに見直したものであった。もっとも世の中で理想の女房、あるいは夫というようなものはない。夫婦はむしろお互いが作るものなのだ。そんな意味もあって、私は太ってすっかり出無精になった妻を仕事や旅行にも引っぱり回し、私と同じように見聞を広める機会を与えるようにしている。放浪を続けた私だったが、いまさらのように、家庭こそ、夫婦が力を合わせて築いていくべき「トリデ」