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かがくはやくにたつか

科学は役に立つか

中谷 宇吉郎

「心」平凡社、1954(昭和29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页

青空文庫

一〇 科学者の心構えの問題

民族の道を拓くために、日本の科学力の一部を結集して、本気になって、重点的に何かをやるというのだったら、年に「二百円や三百円」で辛うじて息をついている研究者たちから、また頭はねをしようというような料簡では、何事もできない。そういう目的の研究費は、別に考えるべきで、日本の政府が、如何に貧乏でも、それくらいのことはできるはずである。

一〇 科学者の心構えの問題

この意見については、それは甘い考えであって、日本の政府に対して、そういう理解を求めることは到底できる相談ではない。現在の科学研究費でさえ、あれをとるのが、せいいっぱいであった、と言われるであろう。遺憾ながら、それはどうもそのとおりらしい。しかしここに考えるべきことがある。

この頃の日本の新聞の第一面といえば、ほとんど連日、陰欝な記事ばかりである。国の前途ということを一寸でも考えたなら、まるで暗澹たるもので、どこへ望みをかけ得るかという手掛りすらない。アメリカの新聞には、日本の右翼の擡頭が、頻々として報ぜられている。客観的な報道が多く、日本にとっては、非常に危険なことであるが、国民が政治に失望すれば、必然的にこういう傾向に陥るのは、一つの自然現象であるという見方が多いようである。