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ちくはくき

竹柏記

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页

青空文庫

気になるのは八束のことで、役所が同じだから(部屋は離れていたが)姿は毎日みかけるけれども、かたくなに、こちらを無視するようすで、なにを考えているのか、まったく見当がつかない。

――わかって呉れたのだろうか。

そう思いたいが、あんな、ならず者などを使うところまで、つきつめたのを考えると、とうていそうは信じられなかった。

――ではどんな要求をもちだすだろう。

――そして、それはいつのことだろうか。

あのときのようすでは、金の必要に迫られていたらしい。どんな理由の金か、もちろんわからないが、単にこっちを困らせるためだけではなかったようだ。とすれば、その金の問題もかかってくる、と思わなければならない。

――おそらく、もっとも効果的なときに、もっとも効果的な手を打ってくるつもりに、相違ない。

こんなふうに、いろいろと思いまわして、祝言の当日まで、孝之助はおちつかなかった。

その日は、午後から雨になった。

武家のことだし、家に病人もあるので、式はごく質素にし、客も最少限に、ということであったが、それでも、双方の近い親族だけで七家あり、ぜんぶの招客を合わせると、三十人以上になった。