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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页
八束は「お二人が主賓である」と云った。しかしそんなようすはどこにもなかった。招かれた客は重職ばかりで(城代家老は代理だった)身分からいえば、高安は次座より下であるのは当然だったが、導かれた席はそれより下であった。そのうえ、なにより困ったのは、妻を同伴しているのは彼だけで、ほかには一人も婦人客のいないことであった。
「珍しいですね、お二人ごいっしょとは」
そんなふうにたびたび訊かれた。
「ぜひいっしょにと招かれたものですから」
こう答えたが、ぐあいの悪さは、宴が始まるにつれて大きくなるばかりだった。
八束は颯爽としていた。挨拶のとき妻を紹介し、せがまれて男装に扮して伴れて来た、という話で、巧みに客たちを笑わせた。
「江戸育ちでわがままときているからかないません、あとで自慢の舞をまうそうですが、これは褒めないと逆鱗に触れますから、どうぞ皆さんで御喝采を願います」
砕けた口ぶりであるが、妻を誇っている調子が、かなり露骨にみえた。態度は堂々として、しかも磊落で、口のきき方も身振も、あたりを払うというようすである。そうして、孝之助夫妻には眼もくれなかった。
六の三