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うつくしいにほんのれきし
美しい日本の歴史
吉川 英治
「週刊文春」1959(昭和34)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页
さあお進み下さい
或る時、尼は公式の使で円覚寺の壇へ参礼したことがあった。
その日、円覚の大衆は、階の両側に、列を作して、尼を待った。禅門の習いで、法問答を行うのが例であり、尼の機鋒の鋭さを知っているので、日頃、尼に振られていた業腹な連中も手ぐすね引いていたのである。
ほどなく尼の姿は楚々として、山門から大衆の環視の中を階へ向って進んで来た。すると、一人の若僧が躍り出て、やにわに、尼の前へ立ちふさがったと思うと、法衣のすそを捲り上げた。そして股間の陰茎を白日の下に露出し、しかも身を反らしてそれを赤黒い巨大なものに怒らしてみせながら、
『僧の物三尺。如何となす』
と、やったのだった。
すると尼は、微動もせず、即座に、わが裳を左右へさッと掲げて、その真白な肌はもちろん、ふさやかな毛丘にかこまれた玉門までを、僧の一物の前へ示して、
『尼の物、底無し』
と、応酬した。
これは男僧の負けである。三尺と、底無しとでは、スポーツにしたって負けと極まっている。
さあお進み下さい
この慧春尼には、もう一つこんな事がある。兄の了庵の会下の者で死ぬほど尼に恋した若僧があった。
ある晩、尼の寝床に這いこんで、泣きながら掻きくどいた。