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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

……だから、戦争はイヤだった。イヤだったけど、ああなって来れば、どうしようもないんだ。せめて、働いている連中のために、自分にできるだけのことをしよう――そんな気もち。……そうでしたよ。いっそ、徹底すりゃ、よかったんです。自分の気もちを、もっと突きつめて――もっとも、そうすりゃ、牢屋か殺されたか、――そいでも、行くべきだったんだ、そこまで。自分の考えを忠実に突きつめて行ってたら。……勇気がなかった、そいだけの。……そして、そのためですよ、今こんなふうになっちまったのが。ザマあねえ。自業自得で、誰をうらむこともないんだ。

村子 だって、復員したら、その会社に、どうして戻れない――?

佐山 あとかたもなく消えてなくなってるんだ。工場のあったところは草ぼうぼう、本社の建物はキャバレになってる。笑っちゃったなあ。

村子 ……まったく、この三四年、なにもかも変っちゃつた。

佐山 変ったなあ、いいんだ。……人が死んだのも、しかたがない。元も子も、みんななくして、乞食みたいに、四等国が八等国になったのも、それでいいんだ。もともと、そうだったんだろうから。やりきれないのは、どいつもこいつも、戦争したなあ俺じゃないといったツラしはじめた。