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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
ことしのお開帳を当て込みに、自分が心棒になって休み茶屋をはじめ、近所の娘を手伝いに頼んでいるが、主人が江戸者で客あつかいに馴れているので、なかなか繁昌するという。お安が雇い人であれば、その主人に掛合うというすべもあるが、本人が主人では苦情を持ち込む相手がない。義助もまったく諦めるのほかはなかった。
ここまで来た以上、もちろん引っ返すわけにもいかないので、茶屋の女房が買って来てくれた血止めの薬で手当てをして、四郎兵衛とお杉はふたたび駕籠に乗って、石亀川の渡しまで急がせた。お安もさすがに追って来なかった。
江の島の宿屋へ行き着いて、ここで午飯をすませて弁天のやしろに参詣した。今度の開帳は下の宮である。各地の講中や土地の参詣人で狭い島のなかは押合うほどに混雑していた。四郎兵衛の一行三人はいずれも顔を傷つけているので、その混雑の人びとに見送られるのが恥かしかった。
若葉どきの慣いで、きょうは朝から曇って薄ら寒いように思われたが、島へ着く頃から空の色はいよいよ怪しくなって、細かい雨がさらさらと降り出して来た。三人はその雨に濡れながら宿へ帰った。
「今夜は泊るとして、あしたはどうしようかね。