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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
同年の友達ではあるが、甚吉は比較的に初心である上に双方の身代がまるで違っているので、甚吉は旦那、伊兵衛はお供という形で、料理屋の勘定などはいつも甚吉が払わせられていた。そのうちに伊兵衛の取持ちで、甚吉は亀屋という店に奉公しているお園という女と深い馴染みになって、少なからぬ金をつぎ込んでいると、それを気の毒に思って、ひそかに彼に注意をあたえる者があった。お園と伊兵衛とはその以前から特別の関係が成立っていて、かれらは共謀して甚吉を籠絡し、その懐ろの銭を搾り取って、蔭では舌を出して笑っているというのである。それが果してほんとうであるかないか、甚吉もまだ確かな証拠を見届けたわけではないが、そんな噂を聞いただけでも彼は内心甚だ面白くなかった。
その以上のことは、吟味がまだ行き届いていないのであるが、これらの事情から推察すると、三日の宵に伊兵衛が瓦屋から帰って来る途中で、偶然甚吉に出逢ったか、あるいは甚吉がそこに待ち受けていたか、ともかくも何かの口論の末に、甚吉が彼を殺して逃げ去ったものであろうと認められたのも、一応は無理もなかった。兇器の鎌はあたかもそこらに有り合わせたのか、あるいは甚吉が持ち出して来たのか、それは判らなかった。