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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

そうして、二時間ほどの後に帰って来た。磯貝が冷たい死骸となって含満ヶ渕のほとりに発見されたのは、そのあくる朝であった。

「八日の晩にわたくしがいっそ中禅寺の湖水に飛び込んでしまえばよかったんです。なんだかむやみに家が恋しくなって、町まで帰って来たのが悪かったんです。」

お冬は泣いて悔んだ。彼女は自分の父が殺人の大きい罪を犯したのを悲しむと同時に、磯貝にしいたげられた自分のぬぐうべからざる汚辱を狭い町じゅうにさらすのを恐れた。彼女は父が今夜はいよいよ拘引されたのをみて、自分も決心した。磯貝の死に場所であった怖ろしい含満ヶ渕を、彼女も自分の死に場所と決めたのであった。

森君は無論お冬に同情した。身悶えして泣き狂っている彼女を慰めていたわって、再び挽地物屋の店へ連れて帰った。しかしお冬の家は親ひとり子ひとりで、その親は拘引されている。そのあき巣に娘ひとりを残して置いては、なんどきまた何事を仕出かすかも知れないという不安があるので、森君はお冬を自分の宿屋へ連れて帰って、主人にあらましの訳を話して、当分はここに置いてもらうことにした。

八月十二日の日記はこれで終っている。