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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

二十九日の牡丹餅が怖るべき結果を生み出したのである。

長之助の千生の申立てはこうであった。

「わたくしの店から持って行った牡丹餅を食って、中田屋の旦那は死んでしまい、延津弥の師匠も患って、その詮議がむずかしくなったと聞いて、わたくしは急に怖くなって家を逃げ出しました。師匠の円生のところへ行って相談いたしますと、ここで逃げ隠れをするのはよくない。自分におぼえのないことならば、当分は家にじっとしていて、なにかのお調べがあったらば正直に申立てろと教えられましたので、その気になって引っ返しましたが、どうも不安心でならないので、途中から又逃げました。今更おもえば重々の心得ちがいで、それがためにおふくろが殺されるようにもなったのでございます。

どう考えても、わたくしは馬鹿でございました。師匠の意見に従って、自分の家にじっとしていればよかったのですが、いったん姿をかくした以上、なおさら自分に疑いがかかったような気がしまして、七月から八月にかけて五十日ほどの間は所々方々をうろ付いていました。まず小田原まで踏み出しましたが、箱根のお関所がありますので、熱海の方角へ道を換えて、この湯治場に半月ほども隠れていました。