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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
わたくしが初めてそれを知ったのは二十三日の午頃で、その翌日が千鳥から葬式の出る日でございます。延津弥はわたくしに向って、もう隠れている場合ではない、早く帰ってお葬式の施主に立てと申しますので、わたくしも思い切って帰りますと、直ぐに御用になったのでございます。何事もわたくしの不届きで、重々恐れ入りました。」
これに因って察せられる通り、千生はよくよく意気地のない、だらしのない人間で、最初は身に覚えのない罪を恐れ、後には女にあやつられて、魂のない木偶の坊のように踊らされていたのである。
事件の輪郭はこれで判った。その以上の秘密は延津弥の自白に俟つのほかはない。しかも延津弥はその後の消息不明であった。きびしい町方の眼をくぐって、遠いところへ落ち延びてしまったのか、あるいは自分でいう通り、隅田川に身を沈めて、その亡骸は海へ押流されてしまったのか。それは永久の謎として残されていた。
前後の事情によって想像すると、延津弥は千生の母に対して最初は反感を懐いていたが、十両の金を持って来たというのを聞いて、俄かに悪心をきざして、それを巻き上げることを案出したのであろう。