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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
左官屋の親方はたくさんの出入り場を持っていて工面もいい、人間も正直である。同町内であるから、平吉とはふだんから懇意にしている。平吉はそこへ駈け込んで、親方にそのわけを話して、しばらくその金をあずかって貰うことにしたのである。親方は仕事場へ出て留守であったが、女房がこころよく承知して預かってくれた。
「だが、わたしは満足に字が書けないから、いずれ親方が帰って来てから預り証を書いてあげる。それでいいだろうね。」
「へえ、よろしゅうございます。」
重荷をおろしたような、憑物に離れたような心持で、平吉は自分の家へ帰った。しかもかれはまだ落ちついてはいられなかった。かれはすぐにまた飛び出して、近所の時借りなどを返してあるいた。それから下谷まで行って、一番大口の一両一分を払って来た。それでもまだ三両ほどの金をふところにして、かれは帰り路に再び両国の橋番をたずねた。
「平さん。また来たね。」と、おやじは行燈に蝋燭を入れながら声をかけた。
秋の日はもう暮れかかっていた。この時の平吉はもうだんだんに気が落ちついて来たので、あとさきを見廻しながら小声で言った。
「放しうなぎをするよ。