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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

承知しないのが当り前でございます。叔父はたいそう怒りまして、親のためには身を売る者さえある。これほど頼んでも肯かないならば唯は置かないといって、勿論、おどし半分ではありましょうが、ふところから小刀のようなものを出して娘の目のまえに突きつけたので、お定もふるえ上がりました。そこへ善兵衛も上がって来まして、泣き声が近所へきこえては悪いというので、お定に猿轡をはませて、押入れのなかへ監禁してしまったのでございます。この善兵衛というのは叔父と同じ年ごろで、表向きは堅気の商人のように見せかけながら、半分はごろつきのような男であったそうですから、女をかどわかしたりすることには馴れていたのかも知れません。

それでまず一匹の大きい蜘蛛を譲ってもらいまして、叔父はその晩すぐに勝負に出かけますと、一度は勝ちましたが二度目に負けました。それはお春が雷に撃たれた晩で、よい辰の家では娘の帰りが遅いので心配をはじめました。旦那の近江屋も案じていました。そんなわけで勝負はいつもより早く終ったのですが、叔父はやはり家へは帰りませんで、どこかの貸座敷へ行って酔い倒れてしまったのでございます。