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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

それからそれへと探しまわると、五百坪ほどの空地のうちに都合九カ所の穴が掘られていることが判った。そのうちの二カ所は遠い以前に掘られたものらしく、穴の底から高い草が生え伸びていたが、他の七カ所は近ごろ掘られたもので、その周囲には新しい土が散乱していた。しかもその穴を掩うために大きな草をたくさんに積み横たえて、さながら一種の落し穴のように作られているのが父の注意をひいた。

「なんのために掘ったのでしょうねえ。」と、父のあとから不安らしくついて来た母が言った。

何者がこんなことをしたのかはもとより判らないが、一体なんの為にこんなことをしたのかを、父はまず知りたかった。落し穴の目的とすれば、こんな所に穴を掘るのもおかしい。たとい草原同様の空地であるとしても、ここはわたしの家の私有地で、他人がみだりに通行すべき往来ではない。そこへ毎夜忍んで来て落し穴を作るなどとは、常識から考えてちょっと判断に苦しむことである。それにしても、その落し穴に落ちたらしいかの女は何者であろうか。おそらく父が引っ返して提灯を持って来るあいだに、そこを這い出して姿をかくしたのであろうが、その当時二、三カ所でがさがさという響きを聞いたのから考えると、かの女のほかにも何者かが忍んでいたのかも知れない。