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くものゆめ

蜘蛛の夢

岡本 綺堂

岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页

青空文庫

二

会津屋のむすめのお定とお由はわたくしの稽古朋輩で、おなじ裁縫のお師匠さんへ通っているのでございます。従妹同士でもあり、稽古朋輩ですから、ふだんから仲のいいのは勿論で、叔父さんがそんな風ではわたくしたちばかりでなく、さあちゃんやおよっちゃんもさぞ困るだろうなどと考えると、わたくしは本当に悲しくなりました。こういう時の心持は悲しいとか情けないとかいうよりほかに申上げようはございません。どうぞお察しを願います。

あくる日、お稽古に参りますと、お定とお由の姉妹はいつもの通りに来ていました。気をつけて見ますと、わたくしの気のせいか、姉妹ともになんだか暗いような、涙ぐんだような顔をしています。ゆうべのことについて、もっと詳しく訊いてみたいような気もしましたけれど、ほかにも稽古朋輩が五、六人坐っているのですから迂濶なことも言えません。お稽古が済んで、途中まで一緒に帰って来ると、お定が歩きながらわたくしに訊きました。

「家のおっかさんがゆうべお前さんのとこへ行ったでしょう。」

「ええ、来てよ。」

「どんな話をして……。」

正直に言えばよかったのでしょうが、わたくしは何だか言いそびれて、叔母さんはわたしがお湯に行っている留守に来たのだから、どんな話をしたのかよく知らないと、いい加減にごまかしてしまいました。