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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
岡本綺堂『蜘蛛の夢』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜘蛛の夢、穴、有喜世新聞の話、恨みの蠑螺、火薬庫、真鬼偽鬼、慈悲心鳥、女侠伝、廿九日の牡丹餅、放し鰻、馬妖記、平造とお鶴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,189 字 · 298 页
「ここまでは私の推測がおそらくあたっているだろうと思うのですが、さていよいよの最後の問題です。矢田の母はあたかも不在であったので、前後の事情はよく判らないのですが、となりの空家でお筆と吉之助とが密会しているところへ、友之助がそれを発見して踏み込んで行ったのは事実でしょう。さあ、それからがなかなかむずかしい。お筆と吉之助は心中でもするつもりで劇薬を持ち込んだのか、それならば吉之助ひとりが飲むのもおかしい。あるいは吉之助がまず飲んだところへ、突然に友之助が押し込んで来たのか、それにしても、友之助がどうしてそれを飲んだか、飲まされたか。あるいは最初から心中などする料簡ではなく、単に吉之助の持っていた劇薬を、お筆が何かの邪魔になる友之助に飲ませようとして、吉之助もあやまって一緒に飲むような事になったのか、それとも何かの事情から男ふたりを一度に葬るつもりで、お筆が吉之助と友之助とに飲ませたのか、それらの秘密はお筆の白状を待つのほかはありません。したがって、永久の秘密に終るかも知れません。」
「お筆のゆくえはそれっきり知れないのですか。」と、叔父は訊いた。
「それから二、三日の後、有喜世新聞にあの記事が出て、築地河岸で夜網にかかった鯔の腹から破れた状袋があらわれた。