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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
「堀尾さん、僕は何うもあなたを見たような気がしますよ」
と三輪君は興味を催したようだった。
「僕も今然う思ったところですが……」
「帝大じゃないですか? 学校は」
「然うです。英法です」
「それじゃ違いない。僕は去年の英法です」
「僕は此年です」
「何かの講義の時、一緒だったんですよ。何うも見た顔だと思いました」
「後輩ですから、何うぞ宜しく」
「奇遇ですな。教室で机を並べたものが又こゝで机を並べるんですから」
「五年もいたんだから顔が広いんだよ」
と後ろから冷かしたものがあった。
「この野郎!」
「ハッハヽヽ」
「堀尾さん、此奴も帝大ですよ。僕と一緒です。見覚えがありますか?」
と三輪君が指さした。
「さあ」
「尤も此奴はズベで休んでばかりいました」
「棚下しはよせやい」
「芳野って乱暴ものです。成績は悪かったですけれど、柔道は選手でした」
「ひどい紹介をしやがるなあ。芳野です」
と芳野君も居畳まれずに寄って来た。
「堀尾正晴と申します。何うぞ宜しく」
「僕こそ」
「あなた方は去年御卒業後直ぐにいらしったんですか?」
「然うです」
「それじゃもう悉皆要領を得ていらっしゃいましょう?」
「いや、何うして/\」