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しゃべりすぎる
饒舌りすぎる
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页
とおみのが云った、「はいお酌」
「よく考えてみてくれ、土田」十太夫は飲みながら云った、「べつにいそぐわけじゃない、おれはどうしても土田が欲しいんだ」
「あたしを欲しくはないの」おみのは手酌で酒を啜った、「あたしもう二十二にもなってしまったのよ」
「飲みすぎたな」と十太夫が遮った。
「今日は飲むの」おみのは嬌かしい表情で微笑し、手酌でまた酒を啜った、「これまでずっと胸にしまっておいたことを、今日はすっかり云うつもりよ、枡平の娘とお客さまではなく、土田さま小野さまとおみの、男と女の対でいきましょう、いいわね」
「おれの失敗だったな、土田」と十太夫が云った、「よし野にすればよかった」
「初めてお二人がみえたのはあたしが十七のとしだったわ」とおみのは続けた、「それから十九のとしにあの話が出たのよ、いったい二人のうちどっちが好きだ、土田かおれかって、小野さまが膝詰めで仰しゃった」
「とんだ雪見酒になったぞ」と十太夫が云った、「まあお酌をしよう」
「あたし途方にくれちゃいました」十太夫の酌を受けながらおみのは続けた、「あなた方はいつもお二人ごいっしょだし、土田さまも小野さまもいいお方だし、一人ずつべつにお会いしたことはないでしょ」