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しゃべりすぎる
饒舌りすぎる
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页
土田正三郎はもの問いたげな眼をした。
「文句を云うな」と十太夫は竹刀を取って素振りをくれた、「さあ、支度をしてくれ」
土田は稽古着に着替えながら、なにがあったのかと、安川大蔵に訊いた。安川はただ肩をゆりあげただけであった。道場へはいっていった土田は、自分の竹刀を取って立ち向うと、十太夫の面と胴へ、みごとな打ちを二本入れた。
「弱い、弱い」と十太夫が叫んだ、「もっと力いっぱいやれ」そしてさらにどなった、「おれをかたきと思って打ち込むんだ、さあ」
土田正三郎はするどい打ちを面へ入れ、十太夫が受けると、竹刀を返して躰当りをくれた。十太夫は転倒し、転倒したまま十二、三尺も滑ってゆき、「これまで」と叫んで面をぬいだ。ばか力だ、よけいなことを、と云いながら十太夫は足を投げだした恰好で、籠手を外し、胴をぬいだ。安川がそれを助け、十太夫は額の汗を手で押しぬぐった。
半刻のち、十太夫と土田は芝野川に沿った畷道をあるいていた。
「おれは安川のしづを嫁に貰う」と十太夫が云った、「異存があるか」
土田は眼をそばめて十太夫を見た。
「安川大蔵の妹だ、忘れたのか」と十太夫が云った、「――このまえ二人で話してから、気になったので安川に訊いてみたんだ、するとまだ未婚のままうちにいるという、母親に亡くなられて女手がないため、主婦の代りになった