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しゃべりすぎる
饒舌りすぎる
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页
ていると、気が咎めて耐えられないようなことが、――こういう疑惑は、五十両という金に対して現実的な責任が明らかにされたよりも、却って彼のために不利であり、ぬぐうことのできない汚点となるものだ」
「それでどうした」
「噂は弘まるばかりだし、無実を証拠立てる方法もない、たれそれとかいうその侍は、たまりかねてその藩を退身した、たぶんこらえ性のない男だったんだろうな」と土田は巧みにまをおいて云った、「――彼が退身したあとで、問題の金が発見された、どういういきさつだったか忘れたが、ともかく五十両はちゃんと出て来たんだ、けれども、退身したたれ某に同情する者はなく、彼に対する疑惑が誤りだったと云う者もなかった、つづめて云うと、彼は出処進退を明らかにしたことによって、却って自分を不当な」
「その話はいつか聞いた」と十太夫が遮った、「おまえはおれに師範を続けさせようとして、そんな話をもちだしたんだろう、だがそいつはでたらめだ、作り話だ」
「それなら云ってしまうが、これはこの長島藩であった事なんだ」
「ばかなことを」
「古い人は知っている筈だ」と土田は云った、「おれは父に聞いたんだがね、御先代の治世にあった事で、その侍の名は矢野五郎兵衛というんだよ」