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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

五

礫はばらばら、飛石のようにひょいひょいと大跨で伝えそうにずっと見ごたえのあるのが、それでも人の手で並べたに違いはない。

もっとも衣服を脱いで渡るほどの大事なのではないが、本街道にはちと難儀過ぎて、なかなか馬などが歩行かれる訳のものではないので。

売薬もこれで迷ったのであろうと思う内、切放れよく向を変えて右の坂をすたすたと上りはじめた。見る間に檜を後に潜り抜けると、私が体の上あたりへ出て下を向き、

(おいおい、松本へ出る路はこっちだよ、)といって無造作にまた五六歩。

岩の頭へ半身を乗出して、

(茫然してると、木精が攫うぜ、昼間だって容赦はねえよ。)と嘲るがごとく言い棄てたが、やがて岩の陰に入って高い処の草に隠れた。

しばらくすると見上げるほどな辺へ蝙蝠傘の先が出たが、木の枝とすれすれになって茂の中に見えなくなった。

(どッこいしょ、)と暢気なかけ声で、その流の石の上を飛々に伝って来たのは、茣蓙の尻当をした、何にもつけない天秤棒を片手で担いだ百姓じゃ。」

五

「さっきの茶店からここへ来るまで、売薬の外は誰にも逢わなんだことは申上げるまでもない。

今別れ際に声を懸けられたので、先方は道中の商売人と見ただけに、まさかと思っても気迷がするので、今朝も立ちぎわによく見て来た、前にも申す、その図面をな、ここでも開けて見ようとし