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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

見える。

それからがくがくして歩行くのが少し難渋になったけれども、ここで倒れては温気で蒸殺されるばかりじゃと、我身で我身を激まして首筋を取って引立てるようにして峠の方へ。

何しろ路傍の草いきれが恐しい、大鳥の卵見たようなものなんぞ足許にごろごろしている茂り塩梅。

また二里ばかり大蛇の蜿るような坂を、山懐に突当って岩角を曲って、木の根を繞って参ったがここのことで余りの道じゃったから、参謀本部の絵図面を開いて見ました。

何やっぱり道はおんなじで聞いたにも見たのにも変はない、旧道はこちらに相違はないから心遣りにも何にもならず、もとより歴とした図面というて、描いてある道はただ栗の毬の上へ赤い筋が引張ってあるばかり。

難儀さも、蛇も、毛虫も、鳥の卵も、草いきれも、記してあるはずはないのじゃから、さっぱりと畳んで懐に入れて、うむとこの乳の下へ念仏を唱え込んで立直ったはよいが、息も引かぬ内に情無い長虫が路を切った。

そこでもう所詮叶わぬと思ったなり、これはこの山の霊であろうと考えて、杖を棄てて膝を曲げ、じりじりする地に両手をついて、

(誠に済みませぬがお通しなすって下さりまし、なるたけお午睡の邪魔になりませぬようにそっと通行いたしまする。