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こうやひじり

高野聖

泉 鏡花

「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页

青空文庫

(結構な流れでございますな。)

(はい、この水は源が滝でございます、この山を旅するお方は皆な大風のような音をどこかで聞きます。貴僧はこちらへいらっしゃる道でお心着きはなさいませんかい。)

さればこそ山蛭の大藪へ入ろうという少し前からその音を。

(あれは林へ風の当るのではございませんので?)

(いえ、誰でもそう申します、あの森から三里ばかり傍道へ入りました処に大滝があるのでございます、それはそれは日本一だそうですが、路が嶮しゅうござんすので、十人に一人参ったものはございません。その滝が荒れましたと申しまして、ちょうど今から十三年前、恐しい洪水がございました、こんな高い処まで川の底になりましてね、麓の村も山も家も残らず流れてしまいました。この上の洞も、はじめは二十軒ばかりあったのでござんす、この流れもその時から出来ました、ご覧なさいましな、この通り皆な石が流れたのでございますよ。)

婦人はいつかもう米を精げ果てて、衣紋の乱れた、乳の端もほの見ゆる、膨らかな胸を反して立った、鼻高く口を結んで目を恍惚と上を向いて頂を仰いだが、月はなお半腹のその累々たる巌を照すばかり。