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たましいのあえぎ

魂の喘ぎ

大倉 燁子

「宝石 二巻一〇号」1947(昭和22)年11月、12月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,081 字 · 20 页

青空文庫

四辺を見たが誰もいません。チャンスを逃がすな、と、また――。私は自分の耳を両手で覆いました。

公高は屋上で文鳥を放し、空を仰いで手を叩き口笛を吹いて呼んでいたが、病み上りのところへ強い日光を浴びたので眩暈がしてよろめき庭園の棚に掴まったのを私はいきなり突き落そうとしたのです。彼は落されまいと必死に棚にしがみつく、私は夢中になってその手をふりほどくと、彼は死者狂いで私の髪の毛を掴みました。黒髪は解けて公高の手に蛇のようにからみついた、私は頭を後へ引きざまどんと胸を突いた、あっと一声叫んで彼は墜落しました。実に一瞬間の出来事です。

私は夢みているようにぽかんとして、ただ呼吸をきって喘えいでいました、が、急にはっと我に返ると、疾風のように庭へ馳け降りました、しかし、後頭部をしたたか打った彼は已に息を引き取っておりました。

自分で殺しておきながら何んという矛盾でしょう、私は公高を抱いて私の居間へ連れて行き夢中で人工呼吸を行ったのですが、もう駄目でした。すると急に犯した罪が恐しくなって慄え上りました。殺人! まあ何という大それた事をしたのでしょう。

公高がいくら悪いと云ってもまだやっと十一になったばかり、それをむざむざと――、取り返しのつかぬことをしてしまいました。