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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

「いけねえいけねえ、この様子じゃ、いつになったら奴らが疲れて寝るのだか分らねえ……」と密かに舌打ちをならしていた。

ろくに知りもしない和蘭陀加留多、三次たちのいかさまに手もなく乗って、お綱は他愛なく二百両ほど負けてしまった。

「だいぶ考え込みますね、そっちの番だぜ」

「あいよ」お綱は札を指で弾いて「よくもこう縹緻の悪い手ばかり付く……」と、一枚手から抜きかけたが、ちょっと考える様子をして、何の気もなく上眼づかいに天井を見た。と、バッタリ、欄間の隙から下を見ていた万吉の眼とぶつかった。

「おや?」と動じた顔色を見たので、万吉は慌てて首をすくませた。しかし今さら騒ぎだしては、かえってまずいと思ったので苦しい機智、上から皆の手が見えるのを幸いに、お綱の抜きかけている札を打つなと目顔で教えてやった。

「どうしたのよ、じれってえな」

「まア待って……」も一度万吉のほうをチラと見ると、右のを打てという合図、とにかく、その通りにして見ると、思い通りな札が取れた。さあ、それからはトントン拍子、何しろ向うに、敵の手裏を映す鏡があるのだから、思惑当らざるなしである。たちまち勝ち抜いて場中の金を集めてしまった。